「e-SMART HYBRID」と「e-POWER」の違いを読み解く

今回トヨタ・ライズの「e-SMART HYBRID」モデルを契約しましたが、下調べほとんどなしでの契約だったため、事後で色々調べてみました。
そうすると、ライズは店頭に実車もセールスマニュアル※もない状態でしたが、ネットで調べても店頭同様あまり情報がないということが分かりました。
(2021/11月上旬現在)
そこで、少ない情報とカタログから「e-SMART HYBRID」について推測してみようと思います。

※セールスマニュアル:その名の通り販売員が見る社外秘の資料です。
社外秘の資料ですが、カタログには載っていないことも書いてある場合があり、状況によってはそれを見せてくれることもあったりします。

ライズ、特に新しい「e-SMART HYBRID」搭載モデルを検討されている方は、似たような機構の「e-POWER」とどう違うのかが気になっている方も多いでしょう。
しかし、比較している多くのブログなどでは「どっちが優れているか」という目線で見ています。
実はそういうものじゃないんですよ。
先に解答を述べると、
「e-SMART HYBRID」は小型車に向いたシステム
「e-POWER」は中・大型車に向いたシステム
ということです。

「e-SMART HYBRID」については詳しい資料はありませんので、カタログの記載とプレスリリースで話を聞いたというネットの情報からです。
「e-POWER」は日産のサイトなど、主にネットの情報です。

「e-SMART HYBRID」と「e-POWER」の違いを読み解く資料として、まずは各車の諸元。参考としてライズのガソリン車も。

— 表1 —

ガソリン E-SMART e-POWER e-POWER e-POWER
ライズZ ライズZ ノートX キックスX セレナG
車重(kg) 980 1070 1220 1350 1760
モーター E1A EM47 EM57 EM57
最高出力(kw) 64 78 85 95 100
最大トルク (N・m) 113 170 280 260 320
WLTCモード 20.7 28 28.4 21.6 18
市街地モード 15.9 29.6 28 26.8 17.5
郊外モード 21.9 30.2 30.7 20.2 18.6
高速道路モード 22.9 26.1 27.2 20.8 17.8

 

「e-SMART HYBRID」と「e-POWER」の特長

— 表2 —

e-SMART HYBRID e-POWER
モーターの駆動電力 バッテリーからのみ バッテリーと必要に応じて発電機(エンジン)からも電力供給
システムの複雑さ
コスト
搭載可能モーターの出力
騒音対策 パッシブ アクティブ

「e-POWER」のモーターへの電力供給については
目次TOP>日産e-POWERとは>日産e-POWERの特徴>ノートe-POWERってどんな車?>ノートe-POWERってどんな車?
に説明があります。
「e-POWER」はモーターの駆動にはバッテリーと、状況により発電機からも電力を供給している。
キックスとセレナで同じモーター型番なのに出力が違うのは、エンジンの出力も微妙に違っているので、全体的なチューニングを施しているものと思われる。

「e-SMART HYBRID」は現在分かっている情報では、モーターの駆動はバッテリーからの電力供給のみ。
最大トルクが「e-POWER」に比べて段違いに少ないので、この情報で間違いないものと思われます。
(トルクが少ないといってもガソリンエンジンとは比較にならないほど大トルク。特に低速時は。)

コストについては、ガソリン車とハイブリッドでは通常40万円ほどの開きがあるのが普通ですが、ライズの場合は約30万円ほどの違いと、ハイブリッドとしては非常に価格差が小さくなっています。

ライズ Z
・ガソリン 2,039,000(税込)
・e-SMART HYBRID 2,328,000(税込)

その為の仕様の割り切りなどもカタログなどからも読み取れますが。
多分実際は問題のないレベルの割り切りと思われます。
ただし、ほぼEVなのでファームの書き換えなどで熟成させることができるのも普通のガソリン車と違うメリットです。
(やるかどうかは不明だが、技術的には可能なはず。)

ちなみに日産e-POWERでは、ガソリン車の仕様があるのがセレナのみなので、参考までに載せると
セレナ X (ガソリンHV) 2,576,200(税込)
セレナ e-POWER X 2,997,500(税込)
価格差は約40万円。ただしガソリン車もハイブリッドなので、それを考慮するとe-POWERのコストは通常のハイブリッドより高めということになる。

このシステムとしての価格差(多分倍以上)を考えると、「e-POWER」が優れているというよりも「e-SMART HYBRID」が安いコストでうまく実用の物を作った。
と解釈するのが本当でしょう。

搭載可能モーターについては、「e-SMART HYBRID」はモーターへの電力供給がバッテリーからのみなので、大きなモーターを搭載しても電力の供給不足を招きかねないので、大きなモーターの搭載は難しいでしょう。ということは車重の重い車種へは効率を考えると搭載はできない。
逆にシステムが安価で単純(「e-POWER」と比較して)なので軽自動車などへの流用も難しくないでしょう。
また、電力の供給元(現在はガソリンエンジン)の変化に対しても比較的柔軟に対応できるものと思われる。これもこのシステムのメリットでしょう。
(ユーザーとしてではなくメーカー側のメリットですが)

騒音対策で「e-SMART HYBRID」をパッシブ。「e-POWER」をアクティブとしたのは、発電のためのエンジン起動条件が違うからです。
「e-POWER」では、エンジン起動条件に周囲の騒音も考慮している。静かな時にはなるべく起動せず、走行時や周囲の騒音が高いときに起動するようにしているとのこと。
「e-SMART HYBRID」では「できるだけエンジンを起動しないようにしている」との発言のみ。カタログに書いてあるフロントガラスの仕様で「ウインドシールドグリーンガラス(高遮音性) 」となっています。(他にも遮音対策を施しています)
この2点から考えると、エンジンを起動するときはできるだけ効率の良い回転数で十分に充電するまで連続運転し、騒音については車体各部に対策しているから大丈夫だろう。
というようなメーカーの意図を感じ取れます。
高効率の状態で連続運転(充電)すれば、結果的にエンジンを起動させている時間は短くて済みますから。

この推測は間違っていればいいなぁ・・・

でも、メーカーとしてGoを出したので、きっと騒音もそれほどではないんだろうと期待したい。
もしいまいちだったとしても、対策ファームとかで対処してくれるでしょう。
(。>人<。)

2021/11/17追記
表1から読み取れること

車体とモーターのバランスが一番良いのはキックス。
高速道路モードでも郊外モードとほぼ同じなので、余裕が感じられる。

対してライズとノートは小さいモーターを酷使するため、高速域で効率が悪く燃費が悪くなっている。
高回転域では効率が目にみえて悪くなっていくということでしょう。
ただし、それは「燃費が」という事だけで、ドライバビリティに影響するかどうかは不明。
ドライバビリティには影響しないかもしれない。

ライズのガソリンエンジンは燃費性能が良い。というより車重が軽いのが大きく影響していると思われるが、最近増えてきた高速の120kh区間などではe-SMARTと燃費が逆転する可能性もある。(誰かテストしないかなぁ)

高速を使用しての長距離運転が多い場合などは電動化の恩恵をあまり受けられないので、ガソリン車の方が向いているかもしれない。

この表には書いていないが、モーター駆動の形式は最大トルクの発生回転数が低回転の為、重い荷物を積む・多人数での乗車という機会が多い場合はe-SMART・e-POWERの方が運転が楽になります。

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