いろのはなし
で、基本的なことを書きましたが、このたびルチノーの子をお迎えしたので、今回改めてアルビノ・ルチノーに焦点を当てて書きます。
アルビノとは
アルビノ(albino)は、動物学においては、メラニンの生合成に関わる遺伝情報の欠損により先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患がある個体である。 (出典 wikipedia)
ルチノーとは
黄色色素の遺伝子のみを持つ個体です。メラニンは持たないので、赤目となる。メラニンを持たないので広義ではアルビノの一種と解釈もできる。
※wikipediaにルチノーの項目が無いので、ライターさんねらい目ですよ♪
なぜアルビノ・ルチノーが赤目になるかは、いろのはなしでも書きましたが、
網膜の外側に位置する脈絡膜(暗幕の役割をする)の部分に色素(メラニン)が無いので目が赤い。
(眼球内が暗くならないので血液の色が見えている)
アルビノ・ルチノーは視力が弱いというのは、この脈絡膜にメラニンが無い為です。
脈絡膜にメラニンがなぜ必要かというと、映画館の状態を思い出してくれれば理解しやすい。
暗くするとスクリーンの映像がはっきり見えるが、照明が付くとスクリーンの映像が白くかすんではっきり見えなくなりますね。
メラニンがある → 眼球内が暗くて映像がはっきり見える
メラニンが無い → 周りからの光を遮るメラニンが無い為、眼球内が明るくなり映像がはっきり見えない。
こういう状態になっているのです。
しかし、「視る」という状態については、眼球は入力装置でしかなく、脳でいろんな補正を掛けたりしているので、実際は「すごく視力が弱い」というほどではない。
※視力とは目と脳の見る力。総合力です。注目すると見える。ボーっとしてると、視界には入っていても見えない。
ブラックアイ(目が赤ではなく黒い個体)は、アルビノではなく「白変種」であり、メラニン産生能力はあるがその色が表面に出ていないだけです。
メラニン生産能力はあるので、成長とともにどこかに色が出る可能性がある。
(ルチノーのブラックアイも同様)
ブラックアイを実際は赤目と説明している記事を見たことがありますが、これは赤目現象を実際の赤目と勘違いしているだけ。
※赤目現象:瞳孔から入った強い光が、反射して網膜の血管の色が映し出されているだけ。
ルチノーの黄色について説明している文献を見つけましたので紹介します。
出典:岡山大学大学院自然科学研究科(理学部生物学科)
分子内分泌学研究室
のコラム内にありました。
一部色(品種)の説明で間違っているところもありますが、黄色と白の所だけに注目してください。
以下該当部分抜粋
◆コラム6◆ セキセイインコの黄色や黄緑をつくる酵素が同定
セキセイインコの羽装色はいろいろで,黄緑色(ノーマル),青色(オパーリン),黄色(ルチノー),白色(アルビノ)などさまざまな品種が存在します。これらの色のバリエーションは,psittacofulvinとよばれる黄色色素の層,ケラチンと空気がつくる層,およびメラニンの層の3層の在り方によってつくられます。最もなじみ深い野生型(ノーマル)はこの3層がすべて揃ったもので,メラニンに裏打ちされたケラチン/エア層がつくりだす青色の構造色と,psittacofulvinの黄色層により黄緑色が表現されます。この黄色色素,psittacofulvinが羽枝隆起のaxial plateにおいて,polyketide synthase (MuPKS)によって合成されることが報告されました(Cell 171, 427-439, 2017)。青色羽装のオパーリンは,その酵素の644番目のアミノ酸がアルギニンからトリプトファンに変化していたそうです。たった一つのアミノ酸置換で体色がこんなに変わってしまうというのはすごいですね。
抜粋終わり
ここで知らない単語(笑)が出てきました。Googleで翻訳すると
psittacofulvin → サイタコファルビン Saitakofarubin
とでました。
「サイタコファルビン」で検索すると
インコ羽毛の反射スペクトルと構造の関係
という論文がヒットしました。
そのものずばりのタイトルですね。
ちなみに岡﨑登志夫さんはヤマザキ動物看護大学の教授みたいですね。
これによると(P260)
「インコは、黄色から赤色までの独特な色素・サイタコファルビンを持つことが知られている」
・・・いや、ほとんど正確には知られてないんですよね。(^^;
多くの人が「カロテノイド」とか「カロチン」って言ってます。
カロテノイドは動物は本来持っていなくて、後天的なもの。食物の摂取による着色とかです。
後天的な着色で有名なのがフラミンゴですね。あれは赤い色素を持った餌を食べてあの色になります。(北関東の近くなら、メヒコに行けば見られます)
どうやら「サイタコファルビン」はインコ・オウム類独特の色素らしく、他の生物などが持っていない非常に狭い範囲にしか存在しない為、情報が非常に少ないのでしょう。
その為、黄色の色素として有名な「カロテノイド」「カロチン」がインコの黄色だと勘違いされた。
というのが現実ですね。
-- 追記 -- 2021/1/8
なぜ追記することになったかというと、ピノちゃんをお迎えしたショップで、「部分的なアルビノ」の子が入荷しているのを見つけたからです。
アルビノ(含むルチノー)では、体色(羽だけど)にメラニンを含まないとの認識でしたが、羽にメラニンを含む個体がいるのを確認したので、ここで追記させていただくことにしました。
確認した個体は、ライラック系4羽のうち、3羽がアルビノ(赤目)。
同じブリーダーからの仕入れとのこと。
写真では、一番奥の個体は普通の(と言ってもライラック自体希少だけど)のライラック。
他の3羽が赤目。
※写真撮影は許可をもらってます。
黄色が入っている子がいるので、親はライラックとルチノーかな?
医学的に進んでいる{人}を基準に考えると、
通常アルビノを医学界では眼皮膚白皮症(oculocutaneous albinism; OCA )と呼び、
皮膚症状が判然とせず、眼の症状のみのものは眼白皮症(ocular albinism;OA)と呼ばれています。
(日本語訳として、albinism = 白皮症ですね)
アルビノの判定は皮膚の色ではなく、「眼底検査を行い、白皮眼底の所見の有無を精査する。」
ということ。
つまり、目にメラニン欠乏の症状が出ているのがアルビノとの判断基準(ざっくりとだけど)ということになります。
日本語訳が正確ではないんですね。判定の仕方からすると白皮症ではなく白眼症ですね。
ということで、医学的には赤目=アルビノということみたいです。